エミリー・ブロンテ著の「嵐が丘」 (上・下巻)光文社新訳文庫版を読んだ感想とあらすじをまとめていきます。
きっかけ
最近、名著とか古典とか呼ばれている本を読み漁っている。
スタートは3年前に読んでみた、ドフトエフスキーの「罪と罰」で、読みにくさ、難解さはあるが、それ以上に面白かったからだ。
昨日のあのバラエティー番組観た?あのアニメ観た?映画観た?なんて、知っているマウントは学生時代からずっと続いていると思う。古典文学の知っているはその頂点かもしれない(笑)。
そんな不純な動機で読んでみた。なんと「世界三大悲劇」であり、「世界の十大小説」でもピックアップされているくらいの本なのだ。
ということで読んでみました。
ちなみにそれぞれこの通りです。
世界三大悲劇
No | 作品名 | 著者 |
1 | 嵐が丘 | エミリー・ブロンテ |
2 | 白鯨 | ハーマン・メルヴィル |
3 | リア王 | シェイクスピア |
世界の十大小説
No | 作品名 | 著者 |
1 | トム・ジョーンズ | ヘンリー・フィールディング |
2 | 高慢と偏見 | ジェイン・オースティン |
3 | 赤と黒 | スタンダール |
4 | ゴリオ爺さん | オノレ・ド・バルザック |
5 | デイビッド・コパフィールド | チャールズ・ディケンズ |
6 | ボヴァリー夫人 | ギュスターヴ・フロベール |
7 | 白鯨 | ハーマン・メルヴィル |
8 | 嵐が丘 | エミリー・ブロンテ |
9 | カラマーゾフの兄弟 | フョードル・ドストエフスキー |
10 | 戦争と平和 | レフ・トルストイ |
あらすじ
・身寄りのない浮浪児の主人公が、お金持ちに拾われる。
主人公のヒースクリフは、身寄りのない浮浪児である。
その浮浪児を地主であるアーンショウ家のミスター・アーンショウが旅行中に拾ってくる。
拾ってきたアーンショウはヒースクリフを大切にするが、妻のミセス・アーンショウ、また、その息子で兄であるヒンドリーは、ヒースクリフを毛嫌いする。
また屋敷の家政婦や召使いたちも最初は嫌っていじめていた。
一方、自由奔放な妹のキャサリンとは、だんだんと仲良くなって両想いになる。
・世代交代による悲劇
拾ってもらったミスター・アーンショーン氏が亡くなり、その夫人も亡くなる。
当然、兄、ヒンドリーが当主になる。
この世代交代が起こると、いよいよ主人公の立場は悪くなる。ヒンドリーは、対等な息子扱いではなく、召使い扱いしてしまい、ひどい扱いをする。
それでも妹のキャサリンとの関係は良い関係だったが、ここで隣のリントン家が出てくる。
隣と言っても距離は数マイルある(一マイルは約1.6キロメートル)。
リントン家の長男であるエドガーが出てくる。
エドガーはキャサリンに恋をする。一方、ヒースクリフには、召使いとされているので、邪見に扱う。
ヒースクリフはエドガーに恥をかかせる行動をする。キャサリンも最初はヒースクリフに倣ってエドガーを嫌っていたが、喧嘩したことをきっかけに、逆に仲良くなる。
・キャサリンへの失恋から失踪する
・ついにはエドガーから求婚されるキャサリン。
ここでキャサリンはOKを出してしまう。ただそれはヒースクリフを嫌いになったわけではなく、ヒースクリフへの思いはあるが、召使いとして、身分が低いヒースクリフと結婚するよりも、身分が同じ名家同士のエドガーと結婚したほうが、ヒースクリフのためにも良いというキャサリンなりの思いやりがあった。
しかし、ヒースクリフはそんな思いを知らずに、自分を裏切って、エドガーと結婚することになったキャサリンに失望し、悲しみ、屋敷から失踪する。
・お金持ちになって帰ってくる、終わらない復讐劇
そして、数年後、お金持ちになって成功して、見た目もかっこよくなって、立派な紳士として帰ってくる。
そこからは、アンショーン家、リントン家両方の当主、ヒンドリーとエドガーに対して強烈な仕返しをする。
その過程で、精神的に苦しんだヒンドリーも、エドガーも、キャサリンも亡くなってしまう。
さらには復讐のためにリントン家のエドガーの妹イザベラと結婚して、リントンという子ももうけるが、イザベラも、愛したわけではなく、復讐のために利用したまでであり、精神的に追い込まれて、亡くなってしまう。
これで、自分の幼少期に関わった人物の復讐は果たせたことになる。
それでも、復讐劇はとまらない。
その子供たちの世代にまで、復讐してしまう。
自分の実の息子であるリントンも復讐のために利用し、追い込まれて亡くなってしまう。もともと病弱ではあったみたいだが、
・エンディング
子供たちにまで復讐劇は続く、ヒンドリーの子であるヘアトンと、キャサリンとエドガーの子であるキャシーとが、子供たち同士が憎しみあうように仕向けていく。
一方で、その復讐相手の子供は、主人公がもともと愛したキャサリンの子供や、甥っ子であるため、どこかに愛するキャサリンの面影も感じる。
最終的には、さんざんいじめて、お互いに憎しみあうようにしても、子供たちは仲良くなっていく。
その姿を見て、愛と憎しみのやるせなさを感じて、生きる気力を失って、物語が終わる。
読んだ感想
よくある復讐劇のその先!
相手に憎しみをもっても、そこからは、何もうまないという話はよく出てくる。
それは理解できるけれど、「憎らしい、ムカつく」という感情はそう簡単に抑えられない。
復讐劇なんていうのもいくらでもあると思われる。
ただこの作品の凄い、珍しいと思ったところは、復讐の先が憎き敵だけでなく、その敵の子供世代にも及ぶところだと思う。
そこまで復讐の炎を持ち続けることは凄いと思った。
また愛憎劇といってしまえば簡単だが、もともとは愛していたキャサリンの娘、甥っ子に復讐しつつも、キャサリンの面影を感じている。
ここが、面白いポイントだと思う。
とにかく登場人物の名前が覚えにくいのが難点
登場人物は、2つの名家しかでてこず、登場人物は10人くらいだ。
それでも、なかなか覚えられなかった。下巻になっても登場人物図をなんども見返し、見返して読んでいった。
理由は、それぞれの登場人物が、そんなにキャラが立っていないのかもしれない、主人公を除く、全員がお金持ちの息子、娘であり、かつ年齢的に、まだまだ子供でわがままを言ってしまう、素直になれないところがあるので、みんな同じに感じてしまう。親子なんだから当然なのかもしれないが
語り手の家政婦はなんとかならないのか
この本は、全ての顛末を知っている、嵐が丘の屋敷に努めていた家政婦が語り手として話が進む。
この家政婦がけっこう重要な登場人物である。
この家政婦が子供のわがままを許さないで、当主であるご主人の言いつけを守っていれば、復讐劇をストップできただろうに、、、、というエピソードがたくさん出てくる。
この辺は家政婦としてのポジション、当然当主である主人の言いつけも守りつつ、子守という意味で子供のわがままを許してあげるという、家政婦ならではのポジションなのかなとは思う。
あとは、結局は時間の問題で、遅かれ早かれ復讐は果たされるのだろうとも思う。
それにしても、そのわがままは許したらダメだろって思う時が沢山ある(笑)。
まったく関係のない刺さったフレーズ
「十時まで寝ていらしっては、いけません。(中略。)朝の十時までに、その日の仕事の半分をすませていない人は、あとの半分もやらずにじまいになりかねませんもの」
文句を言ったが、語り手である家政婦の発言である。
朝に弱く、在宅勤務でかなり甘えまくっている自分にとっては相当ささる言葉だった(笑)。
読むための豆知識
・ヒース
ヒースというのは自分にはまったく馴染みがなかったが、イギリス北東部に生えて紫色の花が咲く雑草、またその雑草が生えている荒地のことらしい。
ヒースクリフはその名の通り、ヒースが生えているクリフ(崖)らしい。
嵐が丘というタイトルは、そんなヒースが生い茂る高台の丘で、嵐がふくところに建てた家だから嵐が丘(Wuthering Heights)らしい。

・ボックスベット
これは話の中で、それなりに重要な場所としてでてくる。この本で知ったが、要は複数人の病室で、プライバシーを確保できるように、個人個人で、カーテンで間仕切りできるのと同じ理屈のベッドだ。
中世のヨーロッパで流行ったとあって、カーテンどころが豪華な装飾のついたドア版もあるようだった。

おすすめ度(★★★★、★4/★5)
「嵐が丘」はおすすめか?と聞かれると、おすすめはできると思う。
ちなみに、現在、新潮文庫、岩波文庫、光文社から文庫本が出ている。
光文社の古典新訳文庫は、罪と罰やカラマーゾフの兄弟の翻訳がかなり評判が悪いらしいが、試しに読んでみようと思って読んでみた。
本のしおりに丁寧に登場人物の紹介があるのは、すごく読者思いだなと感動した。

光文社の古典新訳文庫版で読んだことも大きいかもしれないが、文庫本サイズで、上巻346ページ、下巻412ページとそれなりのボリュームがあるが、一気に読むことができた。
ストーリーは年代がどんどん進んでいき、基本的に話が脱線することなく、幼少期から始まり、復讐劇の開始、次の世代へ復讐の対象者が変わっていく。間延びすることはないので読みやすい。
ありきたりな復讐劇ではなく、世代を超えていく復讐劇は面白かった。
そしてそんな強い思いは、復讐を果たしつつも、自分を蝕んでいって、精神的に病んでいく。
一方で、いくら強い思いで復讐を果たしたとしても、子供世代は思うようにいかないどころか、憎しみ合わそうとする子供たちに恋が芽生える。
テレビドラマや映画のありふれた復讐劇のその先を読みたい人におすすめできると思います。
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